25/Jan/2009 音楽への憎しみ

パスカル・キニャール『音楽への憎しみ』は名著ですが、ぼくは過去に十数年間、音楽を胃の腑の底から憎んでいた時期がありました。いまもその「気分」から抜けきっているとはいえません。音楽を憎んでいた期間、ぼくは音楽から離れるという仕方で、あるいは聴くのではなく聞くという仕方で、その受動的(パトス的)「気分」をやりすごしてきました。

ちょうどその十数年間は、ぼくの喪失の期間と重なります。すべてが失われていた季節。愛も、友情も、尊厳も、生の感覚も、そしてお金も。

どう音楽と付き合っていくか、それが現在の、ぼくの課題と言えます。十数年間をなかったことにするのか。喪失の季節を抜けた春と捉えるのか。後者はいかにもポジティブですが。

ちょうど「季節」を抜ける頃、リッチー・ホウティンのDE9:Transitionsと出会いました。そこにあったのは春でもなく少年期への回帰でもなく、ただ続くだけの冬。彼はぼくを、冬の砂漠へ引きずり出した。

教訓めいたことも何もなしにこのお話は終わりますが、ぼくは、あの「季節」を一生抱え込んで生きていかなければならないと思う。それと同時に、この「季節」から抜け出すことなく、生きていかなければならないのだと思う。ぼくがもっとも憎むのは、ぼくのあの・この「季節」を、ぼくと共有しない、あなたに他ならない。

10/Jan/2009 いよいよ明後日"If I Had You"リリース

日記のようなものをここに書いていきたいと思う。blogは終わった。というよりも、既成大手メディアを頂点とする情報流通の回路に見事にはまり込んでしまった。トップダウンだったものがボトムアップに変わった、というだけで評価する向きがあるが 、馬鹿が金をかけて「降ろしていた」情報を、馬鹿がアントレプレナー的心性(フーコーによる揶揄)で「上げる」ようになったというだけだ。非常に合理的で、コストダウン的で、デフレ的で、そして非常に体制維持的だ。

ところで、あさって、Hypnotic Roomからのファーストシングル"If I Had You"がリリースされます。 楽しみです。うちの親でさえ「この曲はいいね」とのたまったステキテックハウスOrange Society Remix(ほんとうにかっこいいのだ)、デトロイト精神が極太で迫ってくるTakashi Watanabe Remix、いずれも世界的に評価されそうな良曲です。

そしてOriginal mixですが、ぼくがこれまでに経験してきた音楽的なもののすべてが、ここに詰まっています。一音一音、一音を構成する粒子の一粒一粒が、計算と偶然性とほんの少しのマジックによってアウラを放っています。よろしくおねがいします。

http://www.hypnoticroom.com/hroom023.html